(主役を凌駕する演技と存在感で、監督や共演者の絶賛を手にした松田優作。
しかし…。)
主役のマイケル・ダグラスや高倉健が演じるのは日米の警官。
そして松田優作が演じるのは日本のヤクザ。
劇中。
何度か、彼らの格闘シーンが出てきます。
その凄まじい闘いぶりを見ている限り、とても…。
癌に冒された人間の演技とは思えません。
膀胱癌でした。
抗癌剤を使うと健康や見た目に影響が出てしまう為に、一切の使用を拒否。
病巣が足の近くの為に、立ってはいられないほどの激痛に耐えながら。
止まらない血尿に悩みながら。
「明日、死ぬかもしれない」恐怖と闘いながら。
共演者には真実を隠し、文字通り「命を削って」決死の撮影。
魂をフィルムに焼き付けたのです。
『これは男が一生に何度も出会えないような仕事なんです、先生。』
『絶対に、やり遂げたい。』
かかりつけの医師に語っていたそうです。
ここまでして出来上がった作品を、
ハリウッドの映画製作者が放っておくはずはありません。
彗星のごとく現れたこの悪役に、たまらずラブコールを送ったといいます。
なんと。
「ショーン・コネリーの初監督作で、主演ロバート・デ・ニーロの相手役。」
というオファーも届いていました。
しかも、デ・ニーロは松田優作が心酔していた俳優。
まさに夢の共演。
ハリウッドでの成功を間近に控えていたといっても良いでしょう。
しかし、1989年11月6日。
松田優作、永眠(享年39)。
映画『ブラック・レイン』日本公開直後のことでした。
彼の早すぎる死。
日本人にもアメリカ人の映画ファンにとっても衝撃だったことでしょう。
彼の墓にはただ一文字。
【無】
と刻まれています。
(完)
【編集後記】
自分の命を縮めることを知っていながら、格闘シーンを演じる松田優作。
…何とも言えない気持ちになります。
リドリー・スコット監督の作品にしては、
「ブラック・レイン」は凡作だと言う声もあります。しかし、
松田優作の入魂の演技と強烈なインパクトが、
この映画を永遠のものにしました。
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and Good Luck.